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東京2020オリンピック・パラリンピック – 参加スタッフレポート02|いよいよ始まった大会の舞台裏
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2021-12-28
バウアーファインドは、東京2020オリンピック・パラリンピックの公式サプライヤーを務め、選手村でアスリートたちをサポート。日本正規輸入代理店であるパシフィックサプライからも4名の義肢装具士が参加し、装具室の設営準備や運営などを担当しました。
参加スタッフレポート2回目となる今回は、東京2020オリンピック大会期間中の活動内容をご紹介します。
東京オリンピック選手村での活動がスタート
装具室で製品の適合・提供をサポート
オリンピック選手村での開設準備も完了し、いよいよポリクリニックも始動。装具室でバウアーファインドのスタッフとともにアスリートたちのケアをサポートした筏に、ポリクリニックでの業務内容を聞いてみました。
筏:トレーニングや本番中の怪我でポリクリニック内にある整形外科を受診した選手は医師の診察を受け、装具の処方箋を持って装具室へやって来ます。私たちスタッフは処方箋を確認して、大きく次のような流れで製品の提供を行いました。
1. ヒアリング
処方箋の内容だけでなく、怪我の箇所や状態、選手の競技や特徴的な動き方なども選手本人、担当の理学療法士、チームドクターなどに詳しくヒアリング。装具が競技に支障がないかなども詳しく聞きました。
2.製品の選定
ヒアリングの内容にあわせて製品を選定。外傷部分だけでなくその原因となる部位にも必要な場合には、複数の製品を選んで提案することもありました。
3.採寸
選手の了承を得て、製品に必要な採寸を行います。選手に触れることなく計測できる3D計測機を使用しました。
4.適合
試し履きしてもらい、選手の感想を聞き、担当の理学療法士やチームドクターとも会話して、その選手にとって最適な製品を適合して提供。装着したまま実際の競技の動きをその場で行い、支障がないか確認するケースもありました。
基本的にはドイツから来たバウアーファインド本社の製品開発者やベテラン社員がメインで対応。私は手が足りないときに選手たちへの対応を行いました。
会話は基本的に英語です。最初は戸惑いましたが、事前に勉強した甲斐もあってなんとか日常会話はでき、医療用語にも慣れてきて、選手ともコミュニケーションがとれるようになりました。
製品の提案や適合をする上で選手とのコミュニケーションは不可欠です。処方箋には、たとえば膝の怪我なら「ニーサポート」とか、「コンプレッションソックス」しか書かれていないんです。ニーサポートでもソフトなタイプなのか、ハードなタイプなのかは、こちらで判断しなければいけません。そのため、選手や理学療法士と会話して、膝の状態や固定の有無、競技についてもしっかりヒアリングすることが大事です。
処方箋にはその選手の競技名が書かれているのですが、競技だけわかってもなかなか最適な製品が提案できないので、とにかくわからないことは質問して、コミュニケーションをとるように心がけました。そのおかげで、意思疎通がとれた上で提供した製品は選手にも満足していただけたと思います。
アスリートの緊張感が伝わる現場
さまざまなアスリートが訪れる装具室の雰囲気はどんなものだったのでしょうか?
大川:私の業務は、装具室での適合・提供がスムーズに行えるよう製品の準備や在庫の確認などを行い、バウアーファインド本社スタッフを補佐する役目です。装具室の雰囲気は、試合が始まるまで緊張感が漂っていました。
ポリクリニックに来る選手は、怪我など何か体に不調があって訪れる方がほとんどで、「これから試合なのにどうしよう」といった不安な顔をしている選手もいて、安易に声をかけられない空気でしたね。
筏:オリンピックが始まってから怪我によって試合に出られなくなった選手や重度な怪我をされた方も何人かいて、その方々の表情は忘れられなくて…。こうした選手の対応を行うときはすごく緊張しました。
選手たちから評判がよく手応えも
東京2020オリンピックの試合中継でバウアーファインド製品を使用している選手を多く見かけましたが、選手たちの評判はどんなものだったのでしょうか?
大川:装具室で装着して効果を実感し、笑顔になっていく選手が多かったのが印象的でした。製品を提供した選手が後日、「これ、すごい効果良いよ」とわざわざ言いに来てくれたのもうれしかったです。
海外の選手は日本語で話しかけると喜んでくれるんです。だからお礼に来た選手に「ありがとうございます」って言うと、相手も「ありがとうございます」と返してくれて、お互い「ありがとうございます」と言い合っていましたね。
筏:装具室を訪れた選手たちのバウアーファインドへの評価は高く、私も手応えを実感しました。まず製品自体への満足度が高いことが大きな要因ですね。
種類が豊富でサイズ展開が細かく、機能性も高い。選手たちがもともと使っていたインソールやサポーターが必要な機能を備えていないことも多く、純粋に製品の良さを利用者した選手に実感していただけました。
もうひとつ、バウアーファインドのスタッフによる親密なコミュニケーションも大きいのではないかと思います。たとえば、ドイツから派遣されたスタッフが、次にドイツと対戦する他国の選手に対してでも、少しでも良いパフォーマンスが発揮できるように親身になって応対していたのが印象的でした。
選手の帰り際に「次の試合、勝ってね」と送り出し、その選手が笑顔で帰っていった光景をよく覚えています。国を越えたアスリートを想う気持ちが選手たちの笑顔につながったのではないかと思います。
オリンピックならではの体験
大会期間中の選手村でのエピソード
自国開催のオリンピック選手村の空気を肌で感じる。めったにない時間を経験した2人に、印象に残っているエピソードを聞いてみました。
筏:バスケットボールがすごく好きで、バスケの選手がポリクリニックに来たときや、他の競技でも有名な選手が来たときは、やはり少しでもいいからしゃべってみたいなと思いました。
業務が終わった後の選手村内で、ケビン・デュラントやルカ・ドンチッチといったNBAのプレイヤーを見ることができたのもうれしかったですね。
大川:試合が終わった選手たちは装具室に来ても結構リラックスしていたので、待ち時間に雑談していました。フェンシングの選手に剣を触らせてもらったり、すごく背の高い選手と記念写真を撮ってもらったり、いろんな選手とコミュニケーションをとることができました。
選手村にはさまざまな国の方がいて、やっぱり選手同士知り合いの人が多いのか、毎日すごく盛り上がっていました。
あと、選手村内の「ビレッジプラザ」という建物が印象に残っています。スギやヒノキなど全国の自治体から提供された木材を使って建てられ、すごくキレイで日本らしく、海外の選手も喜んでみんな写真を撮っていましたよ。
装具室でヒーローと讃えられる!
万全の準備を行っていてもオリンピックのような一大イベントではなにが起きるかわかりません。装具室で起きたトラブルの解決に大川が活躍したとか。
大川:ドイツのバウアーファインド本社から持ってきたインソールを削る機械が動かなくて、スタッフみんな困っていました。電気系統の問題だったのですが、詳しい人が現場にいなくて、装具室はピリピリした雰囲気…。私は英語をうまく話せないし、役に立てるかわからないですが、とにかく「自分にできることをやろう」と思って、行動に移してみました。
パシフィックサプライの社内に電気系統のことに詳しい人が何人かいるので、連絡をとって相談して、解決方法を聞いたんです。それをバウアーファインド本社の方にも伝え、パシフィックサプライの社員にも手伝ってもらいながら原因となる部品を調達して、なんとか機械が動くようになって。大きなトラブルを解決できて本当に良かったです。
そのあと、装具室で業務しているときに、バウアーファインド本社の方々からずっと「ありがとう!」「あなたはヒーローだ!」って言ってもらって。ヒーローって言われることはそう人生にないので、忘れられない出来事になりました。
業務に役立つ貴重な経験も
オリンピックの舞台裏で、これからの業務に役立つことも経験したという大川と筏。どんなことを経験したのでしょうか?
大川:バウアーファインド本社の方から、いろんなことを教えていただきました。英語でしたが、がんばってヒアリングして製品の知識や機械の使い方、在庫の管理方法まですごく親身になって教えていただき、とてもありがたかったです。
筏:ポリクリニック内にいる医師や理学療法士の方は、日本でもトップクラスの方たちばかりで、普段はなかなかお会いする機会がないのですが、気軽にご挨拶したり、同じ病院内で働くスタッフとしてお話しできたのが、とても貴重な経験となりました。
また、選手のバウアーファインド製品に対する評判が医師や理学療法士の方々の耳にも入り、わざわざ装具室に訪問していただいた方も結構いらっしゃいました。
時間があるときにこちらから診察室やリハビリテーション室のほうにバウアーファインド製品についてご説明にうかがっても、快くお話を聞いてくださり、みなさんにバウアーファインドの良さを知っていただく良い機会にもなりました。